月別アーカイブ: 2010年1月

空巣?こそ泥?誰かが忍び込んでます。

「夕食行きませんか?」と、前の部屋の方から誘いです。
先ほど、行く時にドアを叩くからね!と、言われてました。
今回のツアーで、O女史ファミリーでないのが、
僕と、目の悪いご夫婦と、車椅子さんと、
前の部屋の彼女たち、計6名です。
丁度二分しています。
彼女たちは自然で普通に親切です。
では、一緒に参りましょう。

部屋を出て、一つ目の角を左に曲がった時です。
パタンとドアの閉まる音がします。
「あっ!誰か部屋に入った!」 彼女達の一人が言います。
「えっ!僕の部屋に!」 誰か入ったようです。
「私達の部屋にも昼間誰か入った気配が在るの)と、
訝しげに言います。
あ!そう言えば、今朝、出掛ける前に
僕の部屋に誰か入って来たです。

急いで部屋の前に帰ると、ドアを押し開けるようにして、
誰か、さっと出てきます。
そして、逃げるように反対側の廊下に走ります。
「待て!」「何の用だ!」と、追いかけて捕まえます。
女性ですが大きな腕です。あれっ!
それに、いつの間にか二人になってます。
「言葉分りません!」と、ふたりの女は言います。
あ!昨夜チョコレートを配っていた女たちだな。
取り合えず訳が分らないので、「じゃ、フロントへ行こう」と、
僕は僕の三倍ぐらいの女の腕を引っ張ります。

探し物は大体すぐ目の前です。

「ナイスドッグ」と、検疫所の獣医さんにも言われ、
トレイス君も良い気持ちに成ってたのに、
怒鳴り込まれて、しょんぼりホテルに帰ります。

16日、今夜はツアー最後のお別れパーティーです。
そんなのより、プラハのクリスマスマーケットを見たいなぁ。
クリスタルショップにもう一度行きたいなぁ!
プラハの夜を楽しみたいなぁ!なんて思ったりします。
あ、そうそう、検疫費用六百コロナと言われていたのに、
百五十コロナ、九百円ぐらいで済みます。うーん 安い!
だからコロナも余ってます。使いたいです。
でも一人で行けません。四時過ぎると暗いです。

取り合えず出掛ける準備です。
トレイス君にトイレをさせて、と思ったら、
あれートレイス君のおっしこベルトが見つかりません。
いつも置いてある洗面台には在りません。
バスやトイレの周り、ベットの下も、手探り足探りで探します。
何処にも在りません。
何しろ物を探すのは大の苦手です。
目の前に在っても見えません。
諦めて、もう一個予備に持ってきているトランクのを、
出して使おうかな!と、思います。

でもと、ドアを開けて、廊下の方も探します。
すると「如何したの」と、前の部屋のドアが開いて、
ツアーメンバーさんが声を掛けてくれます。
そいて、部屋に来て、一緒に探してくれます。
ドアと壁の間に見つけてくれます。
「あっ!なんだ」 そんな所に在りました。

検疫が終わって!

検疫所は中年の男女の獣医?さんが居て
対応してくれます。
男性の獣医さんは物凄く大きくって、
口髭も有ったかな?無かったかな?
ドラマに出てくるお医者さんのように頼もしくって、
とても優しいです。
女性の方はてきぱきとして書類などを作ってくれています。

部屋の感じも良いですね。
と,行っても僕好みかもしれません。
昭和初期の事務所です。
木製のドアに、木枠の窓、ぺパーミントグリーンに塗られ、
レトロなムードいっぱいです。
検疫が終わった時、此の部屋で記念写真を
撮ってもらいます。あ!残念、
其の時、裏から誰かが来て男性の獣医さんは
そっちへ行ってしまい、写真には入りません。

僕らは外に出て、ガイドさんを少し待ちます。
トレイス君に「しっちゅ」と、言った時です。
「貴方の訓練所では、そんな命令語を習ったの」
「あー、かわいそう、トレちゃん そんなに大きいのに
 赤ちゃん言葉を使われれ!」と、
突然、うしろからユーザーHSの金切り声の叱咤です。
び、びっくりです。
無事検疫も終えて、ほっとした一瞬なので、
何が起こっているのか、理解できません!!

其の時、ガイドさんと添乗員さんが出てきて、
次は役所へ、
検疫書類に確認のサインを貰いに行きます。
今度はトレイス君は前の席に変わってもらいます。
「うしろ狭いだろ」と、後ろの席になった
ユーザーHSに声を掛けます。が、何の返答も有りません。
なんだろう、こう言うのって。

役所から出て来た添乗員さん
「此れで、ワンちゃんも一緒に帰れますよ」と、
無事サインをもらって、
大きな役目を果たしたように、晴れ晴れとした声です。
「ありがとう御座いました」
トレイス君と一緒に帰れないと大変です。
もう早く帰りたいです。
今直ぐでも飛行場に行って帰りたいです。

トレイス君 座席に挟まる!

16日 午後二時に現地ガイドさんが迎えに来て、
トレイス君たちの検疫所へ行きます。

「トレイス カム」と、僕が車に乗って、
トレイス君を呼びます。
介護タクシーの様な感じだったので、広いと思い
トレイス君のハーネスを外してなかったのです。
わっ!思ったよりずーっと狭いです。慌てて
「ハーネス外してやってください」と、
まだ外に居た添乗員さんに頼みます。
「駄目!自分で外さなきゃ」と、叫ぶ声です。
現地ガイドさんが
「後は狭いから座席に乗せて上げて下さい」と、言いますと、
「駄目!盲導犬は座席に乗せてはいけないの!」と、
またまた叫ぶ声です。
「わぁ!O女史がー」と、思いますが、
其処にはO女史は居なくって、
もう一頭の盲導犬ユーザーのHSです。
トレイス君もびっくりです。

トレイス君、恐る恐る車に乗り込んで来るが、
前の座席と後の座席に挟まって身動き取れません。
とても切なそうな顔です。
大きなトレイス君、前にも行けず、後にも下がれません。
可哀想に挟まったままで車は動き出します。
検疫所までの十五分そのままです。
あんなに強く叫ばれなければトレイス君はもっと
上手に乗れたでしょうに。

それでも何とか検疫所到着です。
トレイス君、なんとかそろりそろりと這い出して来ます。

自由食は困難でした。

16日 テレジーンからプラハに帰った昼です。
今日も昼食は自由食です。自分で食べねば成りません。
テレジーンには障害者の方々は僕以外、
誰も行きませんでした。
皆さんどこでどうしているでしょうか?
自力で何か食べれたでしょうか?
目の悪い、ご夫婦が心配です。

今回のツアーは夕食が二回、
昼食は三回しか付いてません。
見ず知らずの街で重度の視力障害者が食べ物に
有り付くのは困難極まります。

今日の午後は、トレイス君の検疫に行かねば成りません。
それで僕は昼食を添乗員さんと一緒です。
ホテルの側で簡単に食べれる所を探してます。
中華飯店は直ぐ隣に在ったのですが、
のんびり食べている時間も有りません。
検疫の為の六百コロナは残しておかねばならないとなると
あまりお金の掛かる物も食べれません。
ファーストフードやパン屋の様な店は見つかりません。
日本のように百メートル行くとコンビニが在るって事も無く、
アーケードの中のカフェを覗いても
軽食やサンドイッチは有りません。あーあ!

其の辺りをぐるぐると回ったのですが、
適当な所が見つからず、諦めてカフェに座ります。
ー思えば今回の旅行でカフェに入るのも初めてです。
もし自由行動の時、一人では何処へも行けないので、
カフェに座って、行き交う人を見てれば良いやと、
思ったりしてました。
「何だか午後のお茶タイムだね」と、言いつつ
コーヒーとケーキを食べます。
其のケーキが日本の三倍ぐらい有って、
胸焼けするほど満腹です。

要塞都市が地獄への通過地点

悲劇の庭から、もっと悲劇の庭
十八世紀に築かれた要塞都市テレジーンに行きます。
第二次世界大戦で、ナチスドイツによって
西ヨーロッパ諸国から集められたユダヤ人の
収容所に使われます。そして、此処を通過地点に
かの有名なアウシュビッツなどの
絶滅収容所へと送られて行ったのです。

要塞の中は一個の村です。学校も在ります。
学校痕が捕虜記念館になっています。
行動に入って映画を見ます。
古く薄い映画は僕の目には全然映りません。
此処テレジーンは楽団の在った事で有名です。
子供達の合唱隊も在ります。
赤十字からの査察の折、
「我らは此れほど文化活動や教育にも力をいれている」と、
ナチスは虐殺の実態をカモフラージュする為に、
音楽や歌を聞かせたのです。
映画は其の様子を映しています
査察が終わり、御用済みになった楽隊員や子供達は
絶滅収容所に送られ、処刑されたのです。

収容所の芸術家たちは子供に絵も描かせます。
其の事も、文化的教育の一旦と思わせる為
ナチスは黙認します。
教室には戦後発見された沢山の絵が飾られて在ります。
暗くって僕の目にはよく見えませんが、
細っこいバッタのような人物が多く見えます。
決して楽しい気持ちは伝わってきません。

自分の心も体も汚されたような暗い気持ちに成って
外にでます。外は冷たい小雨です。
皆押し黙ったままバスに乗りプラハへ帰ります。

処刑場には血の痕は消えてますが・・・

人間は残酷です。
人種が違う。思想が違うと言って、
此れほどまでに弾圧し除外していきます。
O女史に楯突いた僕は、ツアーの中で孤立していきます。
取り巻き連は冷ややかな態度です。
思い出すと、言い切れない無念が浮かびます。
此処に小さなテレジーンが存在します。

収容所の処刑場です。
子供達の遊ぶ庭やプールの横を通って受刑者は
処刑場に入っていきます。
処刑場は焼きレンガの高い壁に囲まれて在ります。
受刑者は壁際に立たされ、近距離から
打ち抜かれたのです。
庭は記念公園に整備されているので
不気味な様相は無いのですが、
トレイス君は処刑の壁に向かって
一声「クィーン」と、泣きます。
トレイス君には、其の凄惨な日々が見えるのでしょうか??

テレジーン・ナチス強制収容所

収容所は素焼きレンガで造られた建物が並んでいます。
一見、ヨーロッパの農家の納屋に見えたりします。

中に入ります。
小さな窓が高い所に一個在るだけの部屋です。
棚のような長いベットが設えられています。
一人に与えられるのは二十センチです。
大柄な西洋人にとって、片足ほどの狭さではないですか?
此の酷寒の地でありながら一晩に燃やせた
ストーブの薪は二本です。

此の収容所では処刑されたのは何十名かで、
ほとんどの人がそんな過酷な環境の中で、
疫病、栄養士失調、衰弱で亡くなっていったのです。
其の亡くなった人達の墓は入り口前の丘に在った
二万数千個の小さな四角い石です。

独房の並ぶ建物に入ります。
鉄の扉で仕切られた一畳ほどの窓の無い部屋が
独房です。
トレイス君がしきりと身を震わせます。
地の底から湧き上がる無念の呻きが聞こえるのでしょうか?
洗面所です。
蛇口と洗面台が並んでいます。
だが此処は一度も使われる事が無かったのです。
何故なら、蛇口は壁に突き刺さっているだけで、
水道管には繫がって無く水は出ません。
検閲に来る赤十字への見せ掛けだったのです。
となりはシャワー室です。
服を着たまま熱湯を浴びせ、
体や衣服に着いた蚤やダニの駆除をしたのです。
身震いのする惨たらしい、野犬収容所以下の仕打ちです。

トレイス君は此処でも激しく身を震わせます。
ガイドさんは直立不動で、ナチスドイツの非道を話します。
一つ一つ漏らさず伝えようとしています。

テレジーン・ナチス強制収容所

16日 今日はオプショナルツアーです。
プラハから北へ一時間ほど行った所の街テレジーン、
捕虜強制収容所跡を訪ねます。
建設当時はドイツからの進入を防ぐ砦であったが、
ナチスドイツの占領後、強制収容所として使われたのです。

バスを降りると凍えるような風が吹きつけ、
幾本かの枯れ木が立ち並ぶだけの
荒涼とした風景が、そこに広がっています。
大地は凍てついて、踏みしめるとバリバリと
砕ける音が響きます。
左手は川、右手は小高い丘にむかって
無数の墓石が置かれています。
二万数千個の人が葬られています。
墓石はミカン箱大の灰色の石に名前が刻まれて在るとか・・
しかし、過ぎ行く時代の中で今にも凍てつく大地に
沈み込んで仕舞いそうに見えます。

今行く所は小テレジーンで、
主に政治犯や思想犯が収容されていたのです。
レンガ造りの壁のトンネルを潜って入ります。
入ると直ぐ広い庭に出て、左手に大きな建物が在ります。
其処は管理棟で立派です。

そこでチェコ人のガイドさんが付きます。
背の高い痩せた青年です。
質素な身なり、青黒い顔色、彼自信が捕虜に見えます。
淡々と直立不動で収容所の悲しい歴史を話し始めます。
其れを日本人の現地ガイドさんが訳します。
暗い表情の現地ガイドさんもムードです。

中庭の門に「働けば自由になれる」と、
アーチ型にドイツ語で書かれています。
其の門から向こうは収容所です。
現実には此の門を入ったら、
生きて帰れる事は無かったのです。

迷路なの?

12月16日(水)プラハのホテルの朝
ブル〜ン、ブル〜ン、七時頃、部屋の電話が鳴ります。
「部屋に向かえに行かなくって大丈夫ですか」と、
寝起きのガラガラ声の添乗員さんです。
何とか成るだろうと、思ったので
「一人で行きます」と、返事します。

少しして、ガチャとドアが開いて誰かが部屋に入って来ます。
「あ!はい」 添乗員さんが心配で迎えに来てくれたんだ、
本当は他の部屋には入れないんですが!
と、思い、トレイス君の世話をしてたので、「ちょっと待って」と、言います、するとガチャとドアの音がして出て行きます。
急いでドアを開けて廊下を見ますが、
もう何の気配も有りません。
チョコレートを配ってくる女性といい、
此のホテルは何だか変だな?と、思ったのですが、
其の事は次の事件で飛んでしまいます。

七時半の食事時間少し前にトレイス君と部屋を出ます。
部屋を出て左に進み、ぶち当たったら左に曲がり、
次の角で、又左に曲がります。
すると、エレベーターホールに行き当たる。と、
頭で描いた地図の様に進みます。
でも昨夜見た広いエレベーターホールは有りません。
廊下の突き当たりまで行っても在りません。
「あっ、そうだ」 左に左に曲がるのではなく、
右に、右に曲がるんだったんだ!と、
最初に帰ってやり直します。
でも、此方にもエレベーターホールは在りません。
壁をさぐって歩いていると開くドアが在ります。
入ってみます。非常階段のようです。
思ったより、此のホテルは狭いです。
直ぐ壁に行き当たります。枝の廊下も少ないです。
なのに迷路です。どうしても見つかりません。
そんなこんなで何度同じ所を行き来したでしょうか?
時間ばかりが経ちます。
添乗員さんも心配してるだろう!

何時もなら其のあたりで、天の助けが有ります。
メイドさんやポーターさん、他の宿泊者が来るのです。
でも、今朝にかぎって誰も現れません。
何処からもエレベーターの動く音も聞こえません。
何処か分らないところに廊下が在って、其の廊下に在る
エレベーターホールには僕は行けないんだ!
「アー もういいや」「朝御飯なんか食べなくっていいや」
「部屋にかえろー」と、泣きべそで、投げやりです。

「あらっ!」 其の時うしろのドアが開いて、
ツアーメンバーさんの声です。
「あー、天の助け!」と、思ったとたん壁にぶち当たります。
遮光メガネがぐしゃ、ひしゃがります!!