春祭りのお土産

爺ちゃんの里は、
ボンネットバスで県境近くまで行って、
其処から山をくねくねと
赤土のずるずるする道を登った、
山襞に隠れるように在る
十軒ばかりの村落の一番奥です。

其の村の春祭りは4月29日です。
昭和天皇さんの誕生日で、祝日です。
子供の頃は毎年行きます。
ちらし寿司などご馳走に成って、
あとで、竹藪へ竹の子堀に行きます。
4月の終わりは竹の子の季節も終わりでしょうか?
孟宗竹の太い竹の子がにょきにょき出ています。
すっかり僕の背の高さを追い越して、
ほとんど竹に成りつつ有るのまで在ります。
「これはどうだ」と、小父さんが言って、
土から顔を出したばかりの竹の子を掘ってくれます。
「掘ってみるか」と、小父さんに言われ
僕もトンガ(研鍬)を振り上げてみますが、
よろよろとして、狙いも定まらず、
ひ弱な僕の一撃は竹の子の頭を掠めるだけだったり、
充分に根元まで掘れる事は有りませんでした。

爺ちゃんの里の若い小父さんの
掘り出してくれた竹の子は、
本当に僕の体ぐらい有ります。
そんなのを2,3本、肥料袋に入れられて、
爺ちゃんのお土産に成ります。