ノルデの空‐羊雲

 此の頃 よく見る夢に 瀬戸内の夕焼けがあります。
其れは中学生頃の校舎から西の空を見た風景です。
校舎は町の西のはずれに在り、
田園風景が瀬戸内の海に向かって広がり、
沿岸には成長を始めた製紙工場の高い煙突から
モクモクと幾本もの煙が立ち上がっています。

 其の背景の瀬戸内の空が真っ赤に燃え
大きな太陽の落日が始まります。
激しい太陽の最後の輝きが、海を染め、
工場屋煙突のシルエットを際立たせ、
ドイツの画家 ノルデの絵の様に、
次々とドラマティクに雲がたなびき
色彩を変化させながら、日暮れていきます。

 もう二十数年前に成りますが、
羊雲が空いっぱいに広がり、
正に羊の群れが整列して家路に急ぐ光景です。
僕は列車に乗っていたのですが、何処まで行っても
其の光景は変わらず空に繰り広げられています。
瀬戸内の西の空に夕焼けが始まります。
すると羊達は、ピンクからオレンジ、
そして赤へと見事なグラデーションをつくりながら、
暗い空に吸い込まれるまで変化を続けます。

 本当の夕日を見たのはあれが最後かも知れない!
此の頃は薄ぼんやりとオレンジになるばかりで、
海も空も、大地も疎も尽くす様な夕焼けありません。
劇的なノルデの空は何処に行ったのですか?