NHKで募集していたこころに残る場所
日本縦断心旅 日野正平さんが自転車で
手紙に添って訪ねて頂けます。
以下を愛媛の思い出の地で応募しましたが・・
落選しました。
「山の方に行こう」と何か思うところが有ってか、
突然父が言い 母と僕、夏休みで帰省中の姉と息子、
家族揃ってドライブに出かけます。
先ず奥の院に・・・
奥の院は我が町からは法皇山脈を超えた所を銅山川に沿って
少し上流に向かった山中に在ります。
今はトンネルも出来、随分近く成っています。
幹線道路沿いの駐車場に車をを止めます。
未だ其処は下界の夏をを引きずっていて、むっとする
暑さです。寺院には少し山道を登ります。
そして其の参道に差し掛かると、空気は一変
深い谷からはせせらぎの水音が響き
巨木に蓋われ、深山幽谷の趣きに包まれます。
しかし、母はかなりの肥満です。心臓や膝に負担が重く、
春には体調も崩しています。
其の急な登り道はどれほどかきつい事でしょうか。
「おかあちゃんに手を貸してやれよ」と、
見兼ねて父が言います。
其の時 僕は照れくさくって、
母の手を取る事が出来ません。
「おばぁちゃんを引っぱって上げなよ」と、
其の役を姉の息子に振り向けます。
だが未だ幼い其の子も僕の照れが伝染して
尻込みするのです。
「だいじょうぶよ」と、気丈な母は
自力で坂を登り切ります。
だが其のドライブは其れから
母は気分を悪くして吐くし、下ろしたばかりの
父の車は何処かの駐車場で傷が着けられ
何だか空しい思いが残ります。
其の上、其の年の冬の初め 母は倒れ、帰らぬ人と成ります。
父は乳牛を飼っていたし、母は小店を営んでいたので、
其れまで共に外出する事も無く、あの日がが初めてで最後の
家族でのドライブになります。
何故あの時 母の手を取って上げなかったのか・・と、
それに母の死期を察し、家族との思い出を作ろうとした
父の心が悲しく想われ
清涼とした風景の中に我ら家族の姿が
30年を経た今も切なく思い出されます。
ネガティブな心の風景ですが・・・
日野正平さんの明るさでポジティブな思い出を
プラスして頂けるのではないかと応募致します。
注・通称 奥の院は四国札所65番三角寺の奥の院で、
金光山 仙龍寺と号し、四国中央市新宮町に所在します。