病室の前で待たせてください!と、
トレイス君は言われてます。
「ノー、駄目」 此処で待ってて、
ドアの前で座らせます。
とても入りたそうです。
それでドアを開けておきます。
トレイス君はドアの所に座って、
じーっと、ばぁちゃんを見ています。
ばぁちゃんはとても元気そうで、
もともと太っていたので病気窶れも無く
顔色も良く、声に張りも戻っています。
皆で、「安心、安心!」 ほっとします。
抜糸も終わったのですが、手術のあとが
突っ張って痛いのだそうです。
皮膚の表面では無く、肺の切除の傷が
痛んでいるのだそうです。
肺の四分の一を失くしているので、
酸欠になり易く、呼吸法の訓練もしています。
ばぁちゃんの入浴タイムに成ったので、
我らはお暇する事に、するとです。
入浴を知らせに来た男性看護士さんが、
トレイス君を見つけて、あーだ、こーだと
珍しい盲導犬に大騒ぎです。
その隙にトレイス君はばぁちゃんに甘えようとします。
ナースのお姉さんも出てきて、
「長ーいまつげのハンサムさん」と、行ってくれたり、
各、病室からも皆さん顔を出して、
珍客のトレイス君に注目です。
皆に「賢いね!」と、見守られて、
エレベーターホールまでスターの様に帰ります。
あー、うるさい看護士のオジサン、
未だ着いて来て、あれこれ言ってます。
トレイス君はオジサンは無視です。
ばぁちゃんやナースのお姉さんの仲を邪魔され
ちょっと機嫌悪るです。
でも、トレイス君のお陰で、ばぁちゃんも病院の方々も
気分転換の一時のお見舞いに成りました。
広い廊下やロビー、と、ホテルの様な病院を出ます。
高くしてある玄関に立つと、
ずーっと見渡せる水平線の辺りが
薄曇の空の下、明るく透けて来ています。