お盆がえり‐3

  父の里では僕が喜ぶだろうと、キリギリスや轡虫を、山の頂上の茅場から、父の里の年長の従兄が捕らえてきてくれてあります。それは僕のお土産になります。
 それから帰る日には、家から少し山に登った畑に西瓜を取りに行きます。畑は明るく開けた所に在って、瀬戸内まで見渡す事が出来ます。今年の夏の一番立派に出来た西瓜が
お土産用に畑に置かれています。それは見た事の無いほどの大きさで、いかにも美味しそうに太陽をいっぱい浴びて育っています。
 帰る時には誰かがバス停まで其の巨大西瓜を運んでくれ、バスに乗せてくれます。それから車掌さんに、僕と西瓜をちゃんと下ろす様に、くどいほど頼んでくれます。
 
 一度「捕まえた鯉をお土産にやる」と、父の里の隣りの小父さんが言ので、僕は隣りの家の少し浅めの堀に入って、鯉を追いかけまわして、洋服もびちゃびちゃにして、やっとの事で一尾の鯉を捕まえてお土産に貰って帰った事が有ります。檜の葉とビニールの風呂敷に包んでいて。手の中で
ぱくぱくしたり跳ねたりしてたのですが、可哀想にバスの中あたりで、其のお土産はまったく動かなく成って仕舞いました。 つづく