お盆がえり‐4

 谷川から引いた冷たい水で顔や手を洗うと、
 「良く来た!良くきた!」と、庭先に出した涼み台に迎えられて、谷川の水でつめたく冷えた西瓜を、早速、切られます。僕には一番真ん中の処が与えられます。じゃりじゃりと歯ごたえがあり、甘いおつゆがいっぱいです。庭先で食べていますから、おつゆ溢し放題、種も飛ばし放題、大胆に食べれます。思い出しても此の時ほど美味しい西瓜は、ここ何十年も食べた事が無いですね。こんな美味しい西瓜は、もう出来ないのかも知れません。

 暑い日の午後は水浴び等したくなります。此の辺りの子は
谷川の浅瀬の所で泳ぐらしいのです。果樹園の先の水車の
水が流れ落ちる辺りは水遊びに丁度良い浅瀬で流れもゆるやかで、鮒や小魚が泳ぎ、カワガニも這ってます。でも、黒い大きな蛇が鎌首をもたげて、くねくねと泳いでいるのを見てからは二度と川遊びをする気には成りませんでした。谷の水は冷たすぎるますね。

 夕方に成ると、山の空気は急にひんやりして来て、我が家辺りでは聞く事の無い、カナカナカナと鳴く蜩や、つくつくぼうしが鳴き始めます。
 其の淋しげな虫の声を聞いたり、山がどんどん暗く暮れていくのを見ていると、とても悲しく成って、「腹が痛い」と、言って、父の里の皆さんを困らせた事が有ります。でも皆さんは
「どうせ、家に帰りたくなったんだろう」と、見透かされています。
 だが山の夜は真っ暗です。お風呂も便所も庭に在ります。よくは覚えていないのですが、僕はきっと縁側からオシッコさせてもらっていたんでしょうね。
 でも真夜中に目を覚ませて時はもっと恐いです。獣の吼える声が聞こえ、鳥の悲鳴に似た声が有ったり、木々のざわめきも、妄想が妄想を呼び、狼や羆が迫って来ているように思えたり、もっとお恐ろしい事が起こっている気がしてまんじりとも出来なくなり朝を迎えたりします。

 そんなスリリングでミステリアスなお盆の3日ほどを過ごして、下界の我が家に帰ります。そしてお盆はおわり、夏休みも終わります。