「きょうは親鳩が来て嬉しそうだった」と、
隣りのばぁちゃんが
松の枝の野鳩の巣を、
窓から見ながら言ってます。
2羽の雛は元気に育っています。
普段はじーっとして黙っている雛も
親鳩が餌を持って来ると、
ピーピー鳴いて騒いでいるようです。
「可愛くって、つい見てしまうわ!」と、
ばぁちゃんは窓から顔を出して言ってます。
自宅療養中のばぁちゃんの
良い慰みに成ってます。
まだお爺ちゃんの居た頃です。
前庭の懸崖の松の枝に
寒く成りはじめた頃に
雛が生まれた事が有ります。
冷たい通り雨が降ったりします。
ひとり残された雛は、寒いのか?
寂しいのか?お腹がすいたのか?
ピーピー鳴いてます。
気に成るお爺ちゃんと僕は見上げます。
雛は危険と感じるのか?
くちばしをカチカチならして威嚇します。
「あんまし、見ない様にしよう」と、
お爺ちゃんと言い合いますが、
親鳩も来ず、風も出て氷雨がすばいます。
濡れそぼって振るえるのも可哀想!
心細く威嚇する姿も胸が迫ります。
雛に手を掛けると、親鳩が来なくなると言います。
でも、見かねて、ホッカイロを巣に敷いてあげます。
次の日には、もう巣には雛は居ません。
朝日が松葉の雨露を輝かせているだけです。
「巣立ったんだよ」と、お爺ちゃんは言います。
今、我が家の中庭の松の枝で子育てをしているのは
其の時、巣立った鳩でしょうか。