トレ君の御見舞にー3

 そろそろ我ら ピーチ&ワン吉のかえる時間です。
玄関に向かうと トレ君もゆらりと起きだし
一歩二歩 よろよろと歩みを進め
リビングの角先まで出て来ます。
全身に力を込めても 力が籠らない危うさで
其処に立ちます。

 僕は思い出します。
山里に住む爺ちゃん 祖父をの事を。
 里の孫は こんな山道を歩かせ連!
歩かせたりしたら二度と来ないと言うだろう!と
バスの時間に成ると 何度も
田にに沿って走る自動車道まで降りてくれ
置いた背にしょって 急坂を
背負い上げてくれます。
 しかし 未だ 僕の幼いころ
爺ちゃんは そんな力を打仕舞ってしまいます。
やっと敷地の石垣の端まで よろり歩み出て
山を下り かえる我らを見送ります。
 ちゃんとバス停まで送って 
間違いなくバスに乗せるんだぞ とか
家族にはつたえつつ・・
 背負って降りてやれない 自分の老いを
虚しく感じたりし。
吹く風に思いを乗せているように揺らぐのですす。

 今 目前に立つトレ君も
同じ思いを込めて 
見えない目線を交差させて来るのです。

 また来るからね 元気電ね!
また 来てくれよー!
 あー おっちょこちょいのピーチ
姉ちゃんで大丈夫かい!
 そんな無言の声が 閉じたドアの向こうに聞こえます。