四冊目のパスポート

「御挨拶を」と、言われます。
誕生祝のお礼を言わねば成りません。
僕は四冊目のパスポートの事を話します。
一冊目は二十代、一人旅をしました。
夜盲は有りましたが、まだ見えていました。
二冊目は四十代です。書類は見えなく成っていました。
余裕の出来た友人達と一緒に行きました。
三冊目は五十代です。一人歩きは困難に成っていました。
家族に付き合ってもらったり、
障害者団体の旅行に参加しました。

三冊目のパスポートは今年の五月まで有効です。
これで海外旅行は終りにしようと思いました。
でも、最後にトレイス君とヨーロッパの街を
歩いてみたかったのです。
盲導犬ト行く、バリアフリーツアー、ドイツ・チェコのクリスマス
の案内が届きました。

それから一気に話しを盛りあげて、
トレイス君と歩いた古都ドレスデンの素晴らしさ、
ヨーロッパの街がぴったりのトレイス君の事、
外国の方々にも人気者だったトレイス君の事、
楽しかった数々を話したかったのですが、
屈辱的なO女史の暴言、ユーザーHSの嫌味な態度が
思い出されて何も話せませんでした。

此の旅行は六月まで有効のパスポートを
持っていないと参加出来ませんでした。
それで四冊目のパスポートを取る事に成ります。
四冊目は六十代です。もう残存視力は少ないです。
トレイス君と外国の風を感じて歩いてみたいです。
外国の皆さんと親しく振れ合って見たいです。
折角取った四冊目のパスポートです。
無駄にしないよう、これから十年、
頑張って楽しい旅行をしたいです。

「四冊目のパスポートを無駄にしないよう
此れから十年も頑張ります」と、だけ話します。

宴会は終わります。
背の高いウエイターさんがドアの所まで送ってくれます。
外に出ると、降った雪が路面に凍り付いてます。
歩道の石の上にも凍った雪が張り付いてます。
おっと、と、と!石を踏むと滑ってこけそうです。