美味しいご飯ー4

 こんなにも機械化が進まなかった 幼いころには 正に 88の手間をかけての稲作です。
 まず苗作りから始まります。 種まきの日には 家族総出で おひつに  炊き立てのご飯を持って 田圃に出かけます。
 昼になると あぜ道に筵しいて昼食です。  子供たちは 袋を持って 其の食事の席を回ります。  あられやなにがしかの お菓子などを スズめを追うてくれや と言ってお百姓さんたちが 袋に入れてくれます。  それが稲作の 一歩の始まりです。
苗が 育つ間に お百姓さんは 田圃を 水田に変えていきます。  耕運機のない時代は牛にひかせた すきぐわで 何度も何度も 土が どろどろになるまで 砕いていきます。 モグラに 穴をあけられた 畔を丁寧に 塗り固め 水の盛らない土手を作ります。 築で 管理する ため池の水が使える時期が決まっているので 大体  自動的に 順番に 水田が出来上がっていきます。 最初は どろどろの 泥田でしたが そのうち 泥が沈み 澄み切った水の田圃に代わっていきます。
 数日だけの 間ですが とても信じられないほどに  澄み切った水の大地が出来上がります。
瀬戸内海に向かって 水盤のテラスが 海に沈みこんでいくような 不思議な風景が出来上がります。
 夕日がせとうちに沈もうとする一瞬ですが 火星か 何かのように 赤い光を映して 見事な 夕暮れのドラマが見られます。