美味しいご飯ー5

 美しい水かがみを楽しんだ 後 一気に水田は にぎわい始めます。 夜明けとともに 苗が運び込まれ水田に放り込まれ 田植えの始まりです。 助っ人の おばさんたちも勢ぞろいです。 細い木組みで作られた 梯子のような 定規が 水田に据えられます。 ひと区画を担当者が受け持ち 5人ほどで 定規をずらしながら 後ずさり 正確に 苗を植えこんでいきます。
 あれ この春結婚したばかりの 本家のお嫁さんも 身支度もきりりと   出てきております。 泥沼に咲く 一厘の ハスの花です。 だが お嫁さんは畔から 一歩進められず 立往生 すみません その定規のところまで どうやって行くのですか? 諸体験の お嫁さんの悲痛な声が聞こえます。 その汚泥と渇した 水田に 足を おろすことができないのです。
 そうです。ハスの花も汚泥の中で 花を咲かせるように 美味しい白米も 泥沼に根をおろし 美味しい お米を実らせます。
 お嫁さんとワン吉は 何とか二人で 一人分の定規を任され 苗を植え付けていきます。 3本ほどの苗を右手に取り 泥の中に差し込んで 同時に 抜けないように 周りの土で押さえます。 其の一連の動作を 一瞬の技で行わればなりません。  最初は 遅れてばかりで 隣の おばちゃんが 手早く植えこんでくれます。 上手に 我らが植え込めていなかった苗は 暫くして ぷかぷかと 浮かび上がったりもします。 あー かえって 2度手間をかけさせているような  頭カキカキです。
 ではお嫁さんは 食事の用意をしてきなさい と 夕暮れに 視力が怪しくなる ワン吉は 早々に 放免されます。
 田植えの 人たちは 夕暮れてきても 定規で 上残った所を 丁寧に 畔の水面すれすれまで 手作業で植えこんでいってます。