帰って来た星

7年ぶりに天体探査衛星隼が帰って来ます。
ずいぶん感動的です。
災難続きの旅だったのに無事帰り着きます。

50年以上も前の事ですが、
姉の勤め先で生まれた子犬を貰って来ます。
その子犬が見る間に大きくなります。
我が家では母が駄菓子屋をやっていまして、
あまりに大きく成った物ですから、
子供達が怖がる!と、言って、
母屋では無く牛小屋の方で飼うことになります。
シェーンは寂しいって、よく鳴きます。
家族や客が来ると、遊んで欲しいとワンワンと呼びます。
そんな声にも、小さい子は怯えます。
商売の害になる!と、母が言って、
僕も幼かったので庇いきれず、面倒も見れず、
結局手放す事にします。
運よく、出入りの菓子の卸屋さんが
引き継いで飼ってくれる事に成ります。

シェーンは、僕の居ない時に連れて行かれます。
当時の事で、其の卸し屋さんは自転車です。
30kmも離れた所へ行って仕舞います。
シェーンはとぼとぼ着いて行ったのでしょうか?

「シェーンがいる!」「シェーンが、帰っている」と、
シェーンが貰われて行って、一週間ほど過ぎた
朝早く母が言います。
未だ寝ていた僕は飛び起きます。
朝、店を開ける前にシェーンは帰っていたのでしょう。
土間を伝って、僕の寝ている奥まだ来ています。
7日ぶりのシェーンは体全体を押し付けるように
甘えてきます。
僕らに会えた事がとてもうれしそうです。
遠くから歩いて帰ってきたのです。
体に傷が無いか調べます。
どこも怪我していません。
それに大切にされていたのでしょう、
大きな体がより丸々と太って、
毛並みもぴかぴかしています。
僕が学校に行ってる間に、シエーンは、
また卸屋さん所へ帰って行きます。

今、思うと30km、歩いて帰ったシェーンの事が
とても愛おしくなります。
どんな気持ちで帰って来てくれたのでしょうか?
その30kmを自転車で連れに来てくれた卸屋さんの
優しさにも深い気持ちを感じます。
そんな事が、探査衛星 隼 のニュースで、
重い起こされます。
隼は地球を目の前にして、
大気圏で燃え尽きてしまいます。
でも、シェーンは其の後、卸屋さんで幸せに暮らします。
トレ君の甘える時のバネの利いた体が
帰り着いて喜んだシェーンを思い出させて、
切なくなります。
折角帰ったのに燃えた隼も切ないです。