尋ねてみれば・・・

本当は今回の取材は、中村での眼科診察の後、
数年ぶりに会う此の町の友人Tさん宅に泊めてもらい、
カフェにモーニングを食べに行くところから始まります。
Tさんは親類の花作りを手伝いながら暮らしていると、
帰郷報告の手紙に書いてありました。
僕は此の町の事は何も知りません。
それで、田畑の広がる地域を想像します。
カフェへ向かう道です。
覆い茂った松林を貫けると、
驚きの景色、想像していなかった
雄大な海が広がっています。
暗く閉ざされ勝ちだった僕に、其の景色は、
明るく解放された夢を見させてくれるようになります。

Tさんとは都会時代からの友人です。
Tさんは十数年前、母親の老後を見るために、
故郷に家を建て帰ってきます。
同じ四国だから時々会えるかな!と、
言っていたのですが、なにぶんにも互いの地を

四国山脈に隔てられ、易々と会う事が出来ません。

数年前に母親を亡くし、
そして自らも癌に侵され亡くなります。
Tさんの家は、
町の外れで、明かりも点らず、
ぽつねんと佇むばかりです。
その光景は数年後の我が家かも知れません。
ディレクターさんに「素敵なお宅ですね」と、
言われた我が家も、数年後は住む人も無く
ひっそりと窓を閉ざして居るかも知れません。

ディレクターさんに無理を言って、Tさんのシーンは
外してもらいます。
侘しい現実は外してもらいます。
余生は俳句三昧をという生活を前に
逝ってしまったTさん、
静かにそっとしといてあげます。
Tさん安らかに。と、祈ります。
夕方、Tさんの妹さんがホテルに尋ねてくれます。
顔立ちこそ似ていませんが、Tさんと同じように
小柄で柔和な感じの妹さんです。
Tさん良かったな!こういう優しい妹さんが
近くに居てくれて良かったな!
僕は身内と言えば、姉が一人いるだけです。
姉は九つも年上です。