男の料理‐汁

大きな卵が一個づつ入ったお汁です。
父が時々、澄まし汁を作ります。
炒り子で出汁を取った、薄口醤油のお汁です。
大きな卵が、形を崩さず一人一個入ります。
隣の卵とくっついては台無しです。
白身が固まって、黄身が半熟で火を止めます。
父が好きなのはミョウガを薬味に入っているのです。
それ以外に何を入れていたのかな?
卵とミョウガの印象が強くって思い出しかねますが、
お揚げか蒲鉾なども入れてたような??

父の此の澄まし汁は、朝、夕の物と言うより、
例えば、混ぜ寿司を作った時、
ちょっとしたお客さんが来た時などに作ります。
よそゆきのお汁です。
きっと深い山で育った父の里では、
魚が間に合わなかったのでしょう。

母が居た頃、僕の友達が泊まりに着たりすると、
母は取り合えず混ぜ寿司を朝からでも作ります。
そして、父の卵の澄まし汁が付きます。
突き大根に、庭の甘柿を入れた
酢の物が添えられたりすると、我が家のご馳走です。
「祭りが来たみたいだ!」と、父は必ず言います。

父は母の混ぜ寿司を
「店で売ったら良いなぁ」と、言います。
何処のうどん屋のより美味しいと、食べます。
でも、母が逝って、数年後に
「混ぜ寿司はあんまり好きでない」と、言ってます。
えーっ!驚きです。
母の混ぜ寿司以外は嫌いだ!って事でしょうか??
もう、父も母の所に行ったので、聞けません。
風に聞いても答え無しです・・・